落ち着いたギラギラ救急医のブログ ER×ICU+α 

やっくんの「だから救急はおもしろいんよ」 日々の仕事や生活をつらつらと

インフルエンザについて

蔓延するインフルエンザ情報

インフルエンザについては様々な情報が蔓延しております

テレビで言われている情報が正しいとは限りませんし、偉い人が言っていることを鵜呑みにするのもよくありません

なるべく正確な情報が必要と思いますので、まとめておきます

 

最初に言っておきます

手洗いをして予防するというのが大事

ワクチンで症状軽減と重篤化予防できるというのも大事

疑ったら勇気を持って休むというのがとても大事

確定診断でなく、ある程度の疑いでも休める環境づくりが大事

 

というわけで、それぞれの情報を見ていきましょう

 

予防について

ワクチン

→効果あり

→罹患率を下げられ、重篤化を防げる

→脳症が怖いのであれば、これが唯一の対処法

→副作用が怖い人は因果関係と前後関係には注意

→一番問題となるのはアナフィラキシー(重症の卵アレルギーがある人では注意が必要)

→新生児や過去に問題があったなどで打ちにくい、打てない人もいるので、そういう人を守るためにも打てる人は打つべき 

うがい

→ほとんど意味はない

マスク

→ほとんど意味はない

→唾を飛ばさぬエチケット

→着脱時は汚いものを触るので注意

手洗い

→ウイルスの経口摂取を防げる

→罹患率下げられる

→推奨

お茶でうがい

→水よりはマシというレベル

→お茶は飲みものです

 

診断について

迅速検査キット

→2012年のメタアナリシス(信頼度のかなり高い研究のまとめ)がある

→特異度は99%なので陽性ならほぼ確実に診断できる

→感度は60%程度なので陰性でもインフルエンザということは往々にしてある

→時間が経てば陽性になるというものでもない

→明日また来てねはしてはダメ(寝ていた方がマシ)

→周囲で流行ってて、急性上気道炎で、リンパ節の腫れ方がおかしいとか細菌感染を疑うとか他の疾患を疑う状況でなければ、検査陰性でもインフルエンザと診断すべき状況はある

検査陰性でもインフルエンザと診断するなら検査の意味がなくなるのでしなくてよい

Chartrand C, et al. Accuracy of rapid influenza diagnostic tests: a meta-analysis. Ann Intern Med. 2012 Apr 3;156(7):500-11.

 

治療について

抗インフルエンザ薬

→いろいろな薬剤があるけど、特別効果が優れているものはない

→耐性ウイルスはそれぞれにいる

タミフル(オセルタミビル)

→コクランレビューあり

→発症48時間以内の投与で16時間有熱期間が短くなる

→心血管イベントを減らす

→入院は減らさない

→重篤な合併症(脳症とか)は減らさない

→100人に投与したら1人くらいは肺炎予防できるかも

→頭痛や嘔吐などの副作用が5%程度の人におこる

→若者の異常行動については否定された

→私見ですが、重症化を防ぐエビデンスは乏しいものの、重篤化や合併症リスクの高い人(高齢者、妊婦、すでになんらかの臓器障害があるなど)では投与を考えても良いだろうと思います

Jefferson T, et al. Neuraminidase inhibitors for preventing and treating influenza in healthy adults and children. Cochrane Database Syst Rev. 2014 Apr 10;(4):CD008965.

リレンザ(ザナミビル)

→コクランレビューあり

→発熱時間を14時間短縮する

→重篤な合併症は減らさない

→喘息発作を誘発しやすい

→吸入ができない人は注意(小児、高齢者)

→乳糖使っているので牛乳アレルギーの人に使ってはダメ

  ※添加する乳糖を生成する際に混入する乳タンパクが原因と考えられる

イナビル(ラニナミビル)

→米国の臨床試験でプラセボと有熱期間が同じだったため承認されず

→タミフルと効果が同じ程度だから日本では承認された

→乳糖つかっているので牛乳アレルギーの人に使ってはダメ

ラピアクタ(ペラミビル)

→唯一の点滴薬

→発熱時間を20時間短縮

→オセルタミビルと同じくらいの効果

→食べられない人で、ハイリスクな人には投与考えてもよいかも

→私見:食べられる人には使用しない

ゾフルーザ(バロキサビル)

→これまでの薬剤は細胞内で増殖したウイルスの離散を防ぐ

→この薬はウイルスの増殖を防ぐ

→1回投与でいい

→27時間ほど症状を短くする

→ウイルス検出期間を短くする (タミフル72時間vsゾフルーザ24時間)

→だからと言って周囲への感染は減らせない

→10%程度に耐性ウイルスがいる

→耐性ウイルスに投与すると症状が長引きウイルス排出期間も延長

→個人的には手放しで推奨はできない

麻黄湯

→オセルタミビルより有熱期間が減るかも

→もともと寒気がある時に使う漢方薬

→発症早期につかうとよい

 

追加すべき情報があれば情報を追記していきます