地方二次救急病院の救急医ブログ ER×ICU +α 

やっくんの「だから救急はおもしろいんよ」

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地元のみなさまへ

総社市の高齢者施設でSARS-CoV-2のクラスター感染が起こった時、市民向けにお話する機会がありました

 

その時のお話が聞きたいという声があったのでここに載せておきます

(ちょっと一般論になるように修正しています)

 

 僕からお伝えしたいのは10点です

 

①感染確率はゼロにはできない

手洗い、マスク、フィジカルディスタンス、アイガード(ゴーグル)で、感染を減らすことはできますが、ゼロにはできません。

 

②感染対策は無駄だったわけではない

感染対策は、感染をゼロにするのではなく、リスクを減らすために行います。これまでやってきたことは無駄ではなく、蔓延を防ぐことに一定の効果はあったはずです。

 

③感染対策が甘いからクラスタが発生したわけではない

高齢者でマスク着用ができにくいなど、リスク軽減をしにくい環境はあったかもしれません。しかし、どれだけ気をつけても感染するときはしますし、クラスタが発生する時は発生します(病院でクラスタ再発した例もある)。クラスタ発生は決して失敗を意味しません。日本はクラスタを管理することで、諸外国のような蔓延を防いできました。

 

④リスクは高い時ほど軽減効果がある

感染症は、感染者と媒介者がいて初めて起こります。感染者が身近にいるかもしれないという時こそ、感染対策を行い、ハイリスクな環境を避け、自分の身を守る努力をしましょう。

 

⑤十分な感染対策をしていないと思われる人や感染者、そして周囲の人を責めない

感染予防策は、リスク軽減の役に立ちますが、全員に強制するほどの効果はないです。感染は不可抗力で、誰にでも起こり得ます。意図的に感染者が周囲にばらまくような行為以外は責められるべきではありません。感染予防が不足していると思われる人を目にしても責めたりせず、個人個人ができる範囲のことをできる範囲で粛々と行っていただければと思います。皆様の行動が、そんな他者も救いますし、ひいては自らのためにもなります。いつもありがとうございます。

 

⑥クラスタの拡大防止が最大の目標

個々人の努力に加え、クラスタの封じ込めができれば感染の波が落ち着くことは他の都道府県が証明しています。クラスタの周囲で症状がある人、濃厚接触者をしっかり健康観察することが重要です。県が保健所を通してクラスタを追いかけ、距離を保つための手伝いを総社市が行っています。吉備医師会は、保健所の健康観察の対象とならなかった人の健康管理も積極的に行い、要時は診察を受けられるよう体制を構築しています。無症状で検査陰性の入居者は、積極的に市内医療機関で健康観察を行います。健康観察は一般的に感染可能期間内に患者と接触した最終日の翌日から2週間後までになります。

 

⑦一度クラスタが発生した場所はハイリスクとは一概には言えない

クラスタが発生した場所は、より気をつける分、これまでよりも安全な場になると考えるのが普通です。感染の波が落ち着いた後は通常通り営業を再開している施設が大多数です。ただし、もともとクラスタが発生しやすい業態である点は認識しておかねばなりません。

 

⑧この時期に発熱したとしてもコロナの可能性は低い

総社市ではクラスタが発生して、にわかに身近な感染症と感じられたかもしれませんし、少ないながら高齢者施設クラスタとは無関係な患者も発生しています。しかし、このような状況においても、日々の診療ではコロナ以外の疾患が大多数を占めます。コロナより危ない病気も多々あります。体調が悪くなったらお休みして、医療機関に相談することが重要です。無理せず冷静に。

 

⑨とにかく早くPCRを受けなければならないわけではない

検査は診断のために行います。感染防止は感染予防策によって行います。無症状時に闇雲に検査しても拾い上げられず、感染拡大防止にはつながりません。疑いが強いなら検査結果によらず感染予防策をオススメすることもあります。早く治療をしていたら症状が悪化せずに済むというような治療法はまだありません。他の疾患も念頭に置きつつ、一人一人の背景や症状を勘案して診療にあたります。都度、健康管理法や再診のタイミングを一緒に考えましょう。

 

⑩相談場所は必ず設ける

発熱患者の診療を控える医療機関があるかもしれません。時として、それが市民を守ることにもつながります。ただし、受診先や相談先がなくなると困ります。医師会は保健所や市への問い合わせの際に受診先を提示できるよう、協力体制を築いてきました。症状が悪化したときには市内・市外の病院で連携して、迅速に適切な治療に結びつけます。