地方二次救急病院の救急医ブログ ER×ICU +α 

やっくんの「だから救急はおもしろいんよ」

MENU

地方のコロナウイルス対策

現在の状況

新型コロナウイルス感染症(=COVID-19)で話題はもちきりです

欧州各国では蔓延速度が止まらず、日本の感染者数をあっという間に超えていきました

日本でもこうならないとは限りません

岡山県で発病した人はおりませんが、今後感染者が増えたときのことまでを考えておかねばならないのです

 

現状、COVID-19は指定感染症とされ、診断確定された人は感染症指定医療機関に入院隔離することになっています

この辺りだと倉敷中央病院です

ここには10床の専用病床があります(他の指定感染症も含めてです)

 

問題は、地域で10人を超える患者さんが発生したとき

おそらく蔓延期に入ったと想定されますが、この場合は重症者から入院させるなどの選別が重要になります

 

全員を観察し感染を食い止める

という目標から

死者を一人でも少なくする

という目標に移行するわけです

 

では、軽症患者さんはどうなるかという点ですが、蔓延期に入ると、指定医療機関以外での診療をする必要がでてきます

 

これから

3月1日に厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部から、蔓延期の医療体制について提言がありました

外来診療体制について要約すると以下の通りです

 

 

 

① 地域の感染状況や医療需要に応じて帰国者・接触者外来を増設

帰国者・接触者相談センターの体制を強化し、今の枠組みのまま、外来を早急に受診できる体制をつくる

同センターは帰国者・接触者外来へ患者をつなげる

 

② 一般の医療機関において、必要な感染予防策を講じた上で外来診療を行う

新型コロナウイルスへの感染を疑う人は、受診する医療機関に事前に電話連絡を行うよう周知

電話を受けた医療機関は、受診時刻や入口等の調整(時間的・空間的な感染予防策)を行った上で、患者の受入れを行う

新型コロナウイルス感染症が疑われる方の外来診療を原則として行わない医療機関を設定し、周知する(がんセンター、透析医療機関、産科医療機関、重傷者受け入れ医療機関、医療機能の維持を優先させるべき医療機関など)

夜間・休日の外来診療体制については、診療時間の延長や、夜間外来を輪番制で行うなど、地域の医療機関や医師会等との連携を図る

 

 

具体的に

大きな市民病院があるわけではなく、当地域は医師会で協同していく必要があります

この度、地元医師会では感染症対策委員会が発足し、どのように蔓延期の医療体制を準備するか検討しているところです

 

個人的な考えをまとめるためにここに残しておきます

 

①蔓延期に入ると、さらに誰に検査を行うかという点が重要になってくる

・検査は検出感度が低いため、蔓延期においても、全例に行ったところでスクリーニングにはならない

・COVID-19であると診断がついても、軽症者は自宅療養が基本となる

・病院でクラスター発生という事態は絶対に避けなくてはならない

これを考慮すると、軽症者に検査を行う意義はほとんどなく、インフルエンザを含めた疑似疾患の場合には、医療機関への受診を控え長期的に休んでいただくように周知する他なかろうと思われます

 

②検査すべき人は?

入院が必要になるような中等症以上の人であれば検査をする意義がでてきます

どんな人に入院が必要かと言うと、酸素吸入が必要になる、食事ができないなど、自宅療養が困難になる人になります

この人の入院病床をどうするかということを考えた時、あきらかなCOVID-19である人をそうでない人と同室にしたり、共有物を使用したりということは避けたいわけです

 

③どこで何例発生したか確認が必要ではないか?

おそらく蔓延期に入ると、拡散を食い止める時期にはないので、全例把握する意義は無くなってきます

例えば、新型インフルエンザは現在全例チェックしていません

全例チェックする労力と得られる効果を考えたとき、より適切な患者に適切な医療を届けることに注力した方が効果的だろうということです

 

④どこで検査するか

誰に検査するかを考えれば、必然的に検査を行うのは入院医療機関が望ましいだろうということになります

近くに濃厚接触者がいた場合や、受診をした方が良い状況であるかなどを適切に相談できる窓口の拡充は必須だと思われます

 

⑤入院医療機関の確保は?

地域で病院は限られており、入院診療を提供すると言う重要な役目があります

が、COVID-19の対応をする間、その医療機関は診療がストップします(どのくらい患者さんが発生するかにもよりますが)

通常業務が破綻すると地域医療が崩壊するので、医師会内で夕方夜間診療の担保も含めて、短期的に応援勤務をできる体制を作っておくことは重要かと思います

 

⑥相談窓口の拡充は?

受診前に相談をと言われても、どこに相談するねんという話になります

軽症者は自宅で待機させ、よほど濃厚に疑われ、かつ入院が必要であろう人を上手に拾い上げるということが必要になります

突然行政にできる仕事ではないので、医師会の医師が持ち回りで相談窓口を運営するというのが妥当な線かもしれません

 

⑦運営費用は?

運営費用を市から出すか、他にどうするかという点は重要協議事項

病院への応援で診療を行うという事であれば、応援先病院から給与を発生させる事はできるだろう

そもそも電話相談にはお金は発生しないので、医師の確保は課題

 

⑧運営方針は?

現在保健所は検査閾値を高め、やたら検査を行わないように制限して行っておりますが、蔓延期においてもこの閾値を下げすぎる必要はなかろうかと思います

検査を求めて安易に人を集めることはクラスター発生にもつながります

検査前確率を高めつつ、疑いが強い症例かつ入院症例を選定するための方針を作成し、電話窓口が誰であっても一定の質を担保しなくてはなりません

 

⑨今後、指定病院での入院が飽和して新体制に移行した際には、そのことを明確にし、行政と医師会で積極的に広報して、市民全体で危機を乗り越えるという発想になりたい

 

 

考えたくないですが、地域の入院病床を超える患者が発生したらどうするか

重症者はICUを有する病院への転送となるでしょうが、そうでなくても市外、二次医療圏外への転送を要するかもしれません

全国的にCOVID-19が飽和してきた場合には、イタリアのようにどの重症患者をICUに入れるかという選別が発生し、さらには、どの中等症患者を入院させるかという選別も発生しかねません

その段階は絶対避けなくてはならないです