落ち着いたギラギラ救急医のブログ ER×ICU+α 

やっくんの「だから救急はおもしろいんよ」 日々の仕事や生活をつらつらと

夜勤を乗り切る10の方策

医師もシフト制に

24時間必要とされる救急医療では特にですが、その他の領域でも病院は24時間の対応を求められます

明け方までボロボロになりながらも働く自己犠牲の心は美しく映りがちです

しかし自分の体を守れなければ患者を増やすことになってしまいます

 

近年は働き方改革の波が押し寄せ、個人の無茶苦茶な努力だけで解決しようという流れは廃れてきているなと感じています

そんな中、医師にもシフト制が導入され、救急ではきちんとシフト勤務が敷かれることも多くなってきました

 

朝から翌日の夜まで休みなく働くほどの負担にはならないとはいえ、夜勤は夜勤で体に負担がかかるものです

 

最近、長らくお世話になった先輩から、「夜勤業務が体にこたえる」という理由で救急を退くことを決断したという連絡をもらいました

 

貴重な人材が現場から離れていくことに、何もできないのが悲しいです

 

ともかく、自分の体調を管理しながら長く働ける職場づくりが求められています

 

夜勤をこなすための文献

今回は、そんな夜勤業務と上手に付き合うための論文があったので紹介します。

 


Patrick J Wallace, et al.

Top 10 Evidence-Based Countermeasures for Night Shift Workers.

Emerg Med J. 2020;emermed-2019-209134.

 

「夜間シフト労働者のためのエビデンスに基づく対策トップ10」

という分かりやすい題名です

10の対策を一つひとつ見ていきましょう。

 

対策1 概日リズムに沿ったスケジュールを作る

もともと寝る時間を遅らせて起きる時間も遅らせる方が、それらを早めるよりも変化に順応しやすいので、それに基づいたスケジュールを組みましょう、ということです

ただし6時間を超えるズレは負担になるので、上手にずらしたいところ

夜勤と休日の配置がポイントになりそうです

 

あと睡眠負債は積み重なるので、連続の夜勤は2、3回までにしたほうがいいそうです

夜だけ働くにしても、連日夜勤だと人間らしさを失うということでしょう

 

ただ、単発夜勤も負担になるようです

ゆっくりずらして、ゆっくり戻すのが吉ですね

 

夜勤時間が長くなっても概日リズムが狂ってしまうので、勤務時間が8時間を超えないようにするのもポイントだそうです

 

メンタル面では、勤務希望が通っていると満足度が高くストレスが低い傾向にあるようなので、管理者は意見集約が大変でしょうが考えておきたいところですね

 

対策2 シフト前に昼寝する

14時から16時の間に昼寝するとパフォーマンスが向上するようです

スペインの慣習であるシエスタはめっちゃ長いお昼休憩ですが、実はこの時間帯は概日リズム上、活性が低下する時間帯です

ここで休んでおくと、しっかり活性化できるというわけですね

来たれ昼寝文化!

 

対策3 シフト中は光を浴びる

光は概日リズムの強力な同調因子で、特に青色波長の影響が強いです

最も多く浴びようと思ったら太陽光ですが、夜間勤務中は厳しい!

パソコンやスマートフォンのディスプレイからの光は青色波長を含んでいるので、電子カルテがいいのかもしれません

おお神よ! いにしえの言い伝えの勇者、医療従事者に光あれ!

 

対策4 シフト中の仮眠を取る

午前2時から3時の間に20分程度の仮眠を取るのが効果的だそうです

救急だと難しいれけど、要検討

 

対策5 シフトの早いうちにカフェインを摂取する

4mg/kgのカフェインを午前0時20分から1時20分の間に取るのがいいようです

そして、シフト終わりの4時間以内にはカフェインを取らないようにすると、仕事終わりの睡眠調整にいいです

朝コーヒーを飲むと寝られなくなってしまいます

僕は以前から、いつでもコーヒー飲めるように個包装のドリップコーヒーを持ち歩いています

 

対策6 シフト中の大食を避ける

たくさん食べると注意力が下がるのでやめましょう

どうしても夜勤中にお腹が空いたときは、僕はプロテインか水を飲んでいます

 

対策7 シフトの最後や帰宅途中に光を浴びないようにする

青色波長の光はやっぱり概日リズムを狂わすので、暗い色かオレンジのサングラスをつけましょうということです

日本で根付くんかこれ・・・

 

家に帰って寝るまでに極力パソコンやスマートフォンを眺めない方がいいですね

そういう作業は起きてからやりましょう

 

対策8 メラトニン内服を考慮

エビデンス十分ではないものの、メラトニンを内服すると睡眠時間を伸ばしてくれるかもしれないということ

サプリメントで購入できる国もあるけど日本では厳しいです(泣

 

対策9 暗いところで眠る

明るい部屋では睡眠の質が下がります

寝る部屋には遮光カーテンやアイマスクをつけましょう

 

もともと僕は明るいところがあまり好きではないので、自宅の僕の部屋は窓も作りたくなかったのですが、建築法にひっかかるとかで無理やり窓をつけられてしまいました

しかたないので、厚手の遮光カーテンで常に覆っています

 

対策10 涼しいところで眠る

深部体温が下がることで体は睡眠に向かうので、なるべく熱放散しやすい環境で寝るのが大事です

暖かくして寝ると、中途覚醒の要因となります

 

古墳の石室なんかはひんやりして睡眠には最適な環境だと思いますが、石室でおっさんが寝てる姿は端から見たら恐怖なので、お勧めしません

(高校時代にそんなことをしたような、しなかったような)

 

夜勤明けは古墳にいかず、自宅直帰して涼しい部屋で寝てください

僕もそうします

 

まとめ

今後さらにシフト化が進み、昼夜逆転する人も増えるかもしれません

3交代勤務制の看護師さんなどはすでに工夫をされていることと思いますが、自分を守るためにも、健康管理を頑張りましょう

 

作戦「いのちだいじに」

 

これは自分自身が第一、次に仲間、そして周囲の人々です

 

変わりゆく世の中で、少しでもみなさまが健康的に働けますように