地方二次救急病院の救急医ブログ ER×ICU +α 

やっくんの「だから救急はおもしろいんよ」

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敗血症にビタミンCは効くのか

ビタミンC

ちょうど僕が小学生の頃、CCレモンという商品が自販機を席巻しておりました

 

   サントリー C.C.レモン 500ml×24本

 

500mLにビタミンCが1000mg入っている清涼飲料水

可愛らしいCMソングと爽快感ある味で一世を風靡しました

 

ところで、ビタミンC1000mgってすごいのでしょうか?

そもそも、ビタミンCって何なんでしょうか?

 

ビタミンCはアスコルビン酸という物質で、コラーゲン合成に関わります

カテコラミンやコルチゾールの合成にも関わります

 

「コラーゲンでお肌プルプルぅ!」などと言う脳味噌プルプルの人たちもいらっしゃるので勘違いされがちですが、コラーゲンは割と弾性力がある硬い線維です

皮膚や軟骨、靭帯を構成する他、血管壁なども作ります

 

ビタミンCが欠乏すると、壊血症と呼ばれる、組織が脆弱化する病態に陥ります

重度になると血管が脆くなり易出血性を伴うことが知られています

 

推奨摂取量の100mg/日は、普通に食事していれば欠乏するということにはならないはずなので、一生懸命摂取しなくても大丈夫だと思います

むしろ取りすぎはよくないでしょう(余剰分は尿から出ますが)

 

最近、美容業界でも注目を浴びており、「高濃度ビタミンCクリア美白点滴」などと、ものすごいネーミングで点滴をやっているクリニックもあります

欠乏によりおこる炎症性の色素沈着を予防するためにビタミンCを取っていた名残でしょうか

これを健康な人に投与して本当に効果があるのかは不明です

美白効果があるという確たる証拠が見当たらないので、もしあれば教えてください

 

健康とビタミンC

健康のために「ビタミンC」 健康を維持する目的でのビタミンC投与に効果があるかないかというのは長年議論を続いています

特にかぜ予防

ビタミンCを取った方がかぜは早く治るのではないか、予防できるのではないかという指摘があり、ランダム化比較試験(RCT)を含む研究がたくさん行われました

 

今のところ、コクランレビューでは

「かぜにビタミンCを投与しても効果がない」

とされています

 

しかしそんな中、とてつもない論文が出ました

 

感染症の最重症病態である、重症敗血症や敗血症性ショックの患者さんに、ステロイドとビタミンCとビタミンB1を投与すると、予後が改善できるというものです

 

 

単一施設、後ろ向きの介入前後を比較した観察研究ですが

コントロール群の死亡率が40.4%に対して

介入群では死亡率8.5%

Propensity scoreで補正後の死亡率オッズ比は0.13

(95%信頼区間[CI] 0.04-0.48、P=0.002)

 

「それ抗菌薬ちゃうんか!?」

「でもおかんは抗菌薬ちゃう言うてんねん……」

というくらいの衝撃的な結果です

 

とはいえ、さすがにコントロール群の死亡率40.4%はそもそも高すぎるだろうという点や、単一施設の前後比較の研究であること、ビタミンB1やステロイドの効果はどれほどだったのか分からないといった限界が存在することから、本当にビタミンCに効果があるのかということに再度議論が巻き起こり、RCTが必要であるという流れになっておりました

 

そして、ついにこの度、その待望のRCT、The Vitamin C, Hydrocortisone and Thiamine in Patients With Septic Shock (VITAMINS) trialの結果が報告されました

 

VITAMINS trial

オーストラリア、ニュージーランド、ブラジルのICUで行われたオープンラベルRCTで、Sepsis-3の敗血症性ショックの診断基準を満たした216人を対象に試験が行われました

 

 

介入群には、6時間ごとにビタミンC 1500mg、ヒドロコルチゾン50mg、12時間ごとにビタミンB1 200mgを投与

コントロール群には6時間ごとにヒドロコルチゾン50mgのみが投与されました

 

これらは、ショック離脱しなければ10日間投与されるというプログラムです

プライマリーアウトカムは、昇圧剤離脱状態での7日までの生存時間

 

分かりにくいですが、これは連続4時間昇圧剤を必要としなくなった状態での生存時間を指しています

昇圧剤を使用中に死亡してしまったらゼロ時間で、一旦離脱してしまえば、再度昇圧剤を再開しても、離脱成功として扱われています

 

211人が最終的に解析に組み込まれた結果、7日間(168時間)の昇圧剤離脱生存期間の中央値は

介入群の122.1時間(四分位範囲[IQR]76.3-145.4時間)に対し

コントロール群が124.6時間 (IQR 82.1-147.0時間)と

有意な差はなかったということです

 

セカンダリアウトカムに28日死亡率と90日死亡率も設けられていますが、こちらも有意差なしです

28日死亡率はどちらの群も20%前後ですので、日々の診療の実感としても一致します

ビタミンCとビタミンB1の投与は、敗血症性ショックの迅速な解決に寄与しないだろうという結論となりました

 

ランダム化と薬剤投与までの時間が長かったという限界や、ビタミンCもビタミンB1も同時に投与されているのでそれぞれの影響がわからないという限界などありますが、手放しで「ビタミンCすげぇ」と言うのには待ったがかかりました

 

敗血症診療

○○をやれば○○に効く!というのは、医師をしていれば夢のような文言です

なかなかそこまで言い切れるものは少なく

ただし○○に限る!

みたいな言い方になってしまいます

 

ビタミンCは欠乏するとよくないのかもしれませんが、今は、普通に摂取していれば問題なかろうというのが結論になりそうです

敗血症性ショックの治療に近道はなく、地道に病態を把握しながら、それぞれの臓器サポートに注力するのがいいのだろうと思います

また日々がんばります