中毒診療が苦手な人へ
中毒診療は、救急をやっているとありふれているものなのですが、現場に入るまでに、実務的なことをしっかり学ぶ機会があまりありません
教科書を探すと、様々な中毒物質の特徴が網羅された辞書のような高価な書籍がありますが、薬物中毒や自然毒の中毒が疑われる患者さんを前にして、何をしたらいいのかという具体的な方策がなかなか見えづらいものです
そのため、現場に入って困る場面にたくさん遭遇します
「病歴聴取できないよ…」
「警察呼ぶの?呼ばないの?」
「拮抗薬って覚えなきゃいけないの?」
「患者さん、暴れているやん!」
このような困った経験を繰り返すうちに、多くの方(若手医師や看護師など)は、中毒診療が嫌いになり、苦手意識を持つようになります
そんな人に向けて、中毒診療について、体系化された方法を、わかりやすく伝えられたらと思い書いたのがこちら
中毒診療の実務に役立つ「攻略本」のような書籍になることを目指し、正攻法から裏技的な方法まで紹介しました
中毒診療に携わる医師や研修医、そしていまいち中毒診療がピンとこない学生、実際に困っている看護師、薬剤師のお役に立てるのではないかと思います
そこが知りたかった
普段使用している馴染み深い薬剤も、中毒起因物質となる可能性を秘めています
中毒診療については、おそらく大学などで講義を受ける機会がありますが、多くは比較的遭遇する頻度の高い、致死的な薬毒物の話や、数少ない解毒薬や拮抗薬の話になるのではないかと思います
大事な知識ですが、普段研修医の指導をしている際に、実際に中毒診療をどのように行えばよいかということがイメージできている研修医は少なく、もう少しここの部分は補填する必要があるのではないかと感じておりました
これまでに何回か研修医や若手救急医向けの講演でお話して好評だったものを書籍化したというものです
目次をみて興味がでたら、是非ご一読ください
目次
第1章 中毒の話 基本原則
1-1 中毒診療は嫌われている?
1-2 中毒診療はこれだけでいい
第2章 ABCDEアプローチ
2-1 「ABCDEアプローチ」とは?
2-2 A(Airway:気道)へのアプローチ
2-3 B(Breathing:呼吸)へのアプローチ
2-4 C(Circulation:循環)へのアプローチ
2-5 D(Dysfunction of CNS:意識障害)へのアプローチ
2-6 E(Exposure and Environmental control:脱衣と体温管理)へのアプローチ
第3章 病歴聴取と身体診察
3-1 病歴聴取
3-2 中毒であるとわかっている場合は
3-3 身体診察
第4章 検査
4-1 血糖測定
4-2 血液ガス検査を使おう
4-3 心電図
4-4 簡易検査
4-5 浸透圧を測定しよう
第5章 除染・体外排泄を考える
5-1 催吐
5-2 胃洗浄
5-3 活性炭
5-4 強制利尿って役に立つのか?
5-5 血液浄化療法
第6章 拮抗薬・解毒薬
6-1 拮抗薬・解毒薬は知っておく
6-2 中毒起因物質や毒性代謝物の受容体を阻害する
6-3 失活した酵素を再活性化させる
6-4 中毒起因物質または毒性代謝物を無毒化させる
6-5 毒性代謝物への代謝を抑制する
6-6 毒性代謝物の代謝を促進する
6-7 中毒起因物質の排泄を促進する
6-8 中毒起因物質の薬理反応に対抗する
第7章 支持療法を行う
7-1 「ABCDE」に戻る
7-2 A(Airway:気道)の管理
7-3 B(Breathing:呼吸)の管理
7-4 C(Circulation:循環)の管理
7-5 D(Dysfunction of CNS:意識障害)の管理
7-6 E(Exposure and Environmental control:脱衣と体温管理)の管理
7-7 P(Psychiatric evaluation:精神科的評価)の管理
7-8 再企図は負け
7-9 入院を拒否されたら
7-10 精神科との連携をする
第8章 行政との協力
8-1 それはチクるといいことがあるのか
8-2 社会正義 vs 治療効果
8-3 守秘義務 vs 通報義務
8-4 届け出が決まっている場合もある
8-5 警察が証拠を求めている時は?
8-6 診察にならない時は?
第9章 実践中毒診療:急性アルコール中毒診療
9-1 日本で多い急性アルコール中毒
9-2 急性アルコール中毒の治療
① ABCDEアプローチ
② 病歴聴取と身体診察(トキシドロームを参考に)
③ 検査
④ 除染・体外排泄を考える
⑤ あれば拮抗薬・解毒薬を使う
⑥ 支持療法を行う
⑦ 行政との協力をする
9-3 お話できない人の対応
9-4 検査を拒否する患者さんに検査をしなくても良いか?
9-5 CURVES
おわりに
中毒診療の攻略法のまとめ