国語の時間です
医者って文系なのか理系なのかって高校生の時に考えたことがあります
その時は「どう考えても理系だろう」と思っておりましたが、医者になって論文を書いたり、文章を書く仕事をするようになると、「やっぱり医者って文系かも」なぁんて思ってしまいます
昔から親に「文学を読みなさい」と言われてつつ、全く読まずに育ってきたのですが、文章を書くようになって初めて、「今更読んでおけば良かった」と後悔するのでありました
さてそういうわけで、今回は国語の時間です
読めそうで読めない、読めているようで実は間違っている医学用語について、知識を再確認してみましょう
喘鳴
これは皆さん読めますよね ゼイゼイいっているときのアレです
ゼイゼイいっているので、「ぜいめい」と読んでしまいそうになりますが、違いますよ
「ぜんめい」が正解です
間違えていた人はこの機会に覚え直して下さい
正解者は僕に褒められても嬉しくないでしょうから、密かに喜んでください
流涎
文字の通りよだれがダラダラ流れている状態
これも意外に読めない人がたくさんいるようです
研修医が僕に患者プレゼンするとき「りゅうえん」と言っていて、一瞬何の事か分からなかったけど文脈から判断して理解したことがあります
「りゅうえん」ではありません
「りゅうぜん」です
うっそまじ?って思った人は、辞書を調べてみてください
惹起
これは日常生活であまり使わない言葉ですね
何かを引き起こすときに使う言葉で、「炎症反応を惹起する」みたいに使いますが、「そうき」って読んでる人がいました
残念ですが違います
「じゃっき」が正解です
よろしくお願い致します
関係ないですが、励起を「ぼっき」と読んでる人がいて爆笑したことがあります
励起(れいき)は物理の言葉ですが、原子や分子にエネルギーを外部から与えて、より高いエネルギー定常状態に持っていくことを指します
まぁアレがより高いエネルギーを持つということでイメージ的には正解なのでしょうか…(違う)
粘稠性
ネバネバねばっこい状態を指す言葉です
「粘稠性の痰」って感じで使います
看護師さんがよく使う一方、間違って覚えている様子
「ねんちょうせい」ではありません
マジで
みんなネンチョウネンチョウ言ってますが…
正しくは「ねんちゅうせい」です
これも間違って読んでいた人は、きちんと教えてくれなかった義務教育過程を呪ったあと、ぜひ周囲に啓蒙してください
六君子湯
これくらいみんな当然読めるだろうと思っていたら、以前研修医から驚きの質問がきました
研修医「先生、この患者さんが服用されているロクキミコなんちゃらって何の薬ですか?」
ろ…ろくきみこ…(汗)
もう衝撃です
でもここまできたら気持ちがいいです
正しくは「りっくんしとう」です
金匱要略を抱いて寝て欲しいです
Torsade de Pointes
最後に国語は国語でも外国語の登場
これ皆さん何と読んでいるでしょう?
「TdP」って略されたりしますが、QT延長症候群で見られる特殊な心室頻拍のことを指す言葉です
巷のいろんな本を開いても、「トルサデポワン」とか「トルサードポワント」とか「トルサードポアン」とかいろいろな呼び方があるようで、統一されていない様子が伺えます
これはそもそもフランス語です
「Torsade」は「twist」を意味し、「Pointes」は針の先端を意味する「Pointe」の複数形で、「de」は「of」みたいな前置詞です
英語にすればtwist of spikes
「捻れた針先」という意味になります
心電図で、見た目がそのように見えるのでそのまま名付けられました
ではどのように読むかですが、「Torsade」はそのまま「トルサード」と読み、「de」は「ドゥ」、「Pointes」は「ポワント」と読みます
Pointなら「ポワン」って読むのですが、最後にesがついてPointesとなっていると、最後のtをきちんと発音します
流れるように読めば「de」の発音はほぼ聞こえない程度に発音されるだけではありますが、一応正しい読み方を書くと「トルサード・ド・ポワント」となります
どこにもそんなこと書いてないので不安になってフランスの友人に確認したら「それでいい」ということだったので、これでいいのです