正露丸の木オクレソート
鯖やカツオを媒介して我々の消化管に寄生し、激烈な心窩部痛を引き起こすアニサキス
内視鏡で除去するのですが、正露丸が効くのではないかという話があります
正露丸を製造販売する大幸薬品は、2014年に消化器アニサキス症用薬剤の特許(第5614801号、2014年9月19日登録)を取っています
正露丸の主成分は木クレオソート(wood creosote)
木クレオソートは、ブナやマツなどの原木を乾留(空気を遮断した状態で加熱して分解)して得られる木タールを精製した淡黄色透明の液体で、腸管内の水分調節機能を調整する働きがあるとされます
(大幸薬品「正露丸・セイロガン糖衣Aの主成分木クレオソートの誤解」)
正露丸がアニサキスの症状を緩和する
実は木クレオソート投与により疼痛が改善したアニサキスの2例が報告されています
in vitro 実験では、アニサキスに正露丸を暴露すると、用量依存的に虫体の活動が抑制されたということです
症例報告なのでエビデンスレベルとしてはちょっと乏しいかもしれませんが、アニサキスの活動性が低下することに再現性があるとなるとおもしろい報告です
自分自身、何度かアニサキスを診断し内視鏡で除去する経験をしています
が、胃壁に潜り混んで全力でピルピルしているかというとあまりそんなことはなかったような気がします
そういうわけで、活動性の変化で疼痛がそんなに変わるものなのか、なんで疼痛が落ち着くのかという疑問もあり、非常に興味深いです
アニサキスとアレルギー
近年、アニサキスはアレルギー関連の反応により胃粘膜の浮腫を起こしているのではないかと考えられています
結構きれいな浮腫を呈するので、病歴がしっかりしているなら(それらしい海産物を食べて、その後からの心窩部痛など)、CTや超音波検査である程度特異性をもった診断ができるのではないかと考えています
痛みについても、もともとアニサキスが噛み付いたことによる痛みともいわれていたようですが、アレルギー反応の一環で疼痛を誘発するのではないかという考えが主流になってきています
抗アレルギー薬の投与が症状緩和に有効であることも言われております
なお、内視鏡で取り除けばアレルゲンを除去できるわけなので、内視鏡で虫体を取り除くと、結構短時間で患者さんが楽になったと言ってくれます
アニサキスの除去には、結構繊細な技術が求められます
胃粘膜に噛み付いているため、引っ張ると身体がちぎれ、頭部だけが胃粘膜に残ってしまうということになりかねません
そーっと、じんわりと引っ張るのがポイントです
きれいに取れると、プチ達成感を得られます
アニサキスは噛みきれない
そんなアニサキス、結構引っ張ったらすぐにもげるようなのですが、噛み切るというのは難しいみたいです
アニサキス対策として「よく噛んで食べる」とまことしやかに囁かれることがありますが、固くて噛みきれないのです
いや、僕がやったわけではなく、果敢にもアニサキスをかみちぎろうとした人をネット上で発見しただけです
個人的には絶対にやろうとは思いません(笑)
上野の博物館で、ミンククジラの胃にびっしりと食らいついたアニサキスの標本を見てから、アニサキスがちょっと苦手になりました
今ではCTを見ただけでゾワっとしてしまいます……