落ち着いたギラギラ救急医のブログ ER×ICU+α 

やっくんの「だから救急はおもしろいんよ」 日々の仕事や生活をつらつらと

「鼻血がとまらない」で救急搬送はあり!?

鼻血で救急搬送

鼻出血が止まらないということで救急要請される患者さんは結構います

止まらないと言う人の多くは、止血操作をしていません

 

出てきた鼻血をただティッシュでぬぐいながら、勝手に止まるのを待っていたのだけれど、止まらなくて不安になって救急要請というパターンが非常に多いです

また、圧迫せずにティッシュだけ鼻に入れて、ドレナージのようなことを行なっている人もたまに見かけます

 

出血をみたら圧迫止血

というのが基本ですので、まずはこれを覚えておきましょう

 

鼻血の90%程度は鼻腔の入り口付近の鼻中隔にあるキーゼルバッハ部位からの出血です

そこを圧迫すれば鼻出血はコントロール可能です

鼻出血している方の鼻翼(鼻の一番ふくらんでいるところ)を押さえればOK

救急隊から適切な止血方法を伝授され、搬送時には出血が止まっていることも多いです

 

キーゼルバッハ

キーゼルバッハ部位は人物名が由来となっています

由来となったヴィルヘルム・キーゼルバッハはドイツの解剖学者で、とくに耳鼻科領域の研究で知られています

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キーゼルバッハ氏


鼻血(Nasenbluten)

という潔い題名の著書を残しており、鼻血の出血点として名前も残しているすごい人です

 

ただ、自分だったら何か新しいものを発見しても薬師寺○○とかいう名前をつけようとは思いません

薬師寺病とかつけたら全国の薬師寺さんに申し訳ないし…

薬師寺の止血点なるものを編み出したとしても、毎度僕の顔を思い出しながら圧迫止血させるのは申し訳ないです

 

まぁそれは置いといて、偉大な人物ですから名前は知っておいて損はないと思います

以前EM Allianceのイベントで、マイナーエマージェンシー領域のクイズ大会を開催したおり、キーゼルバッハのファーストネームを訪ねたところ、正解者は一人だけという状況でした

いい機会なので、名前を覚えておきましょう

名前を知っているからといって鼻血は止まりませんが……。

 

鼻ほじは汚い?

このキーゼルバッハ部位の圧迫、薬師寺個人としては幼稚園児のときに既に体得していました

当時とにかく鼻をほじりまくっていたので、よく鼻出血を起こしていたのです

鼻をほじりまくっているにもかかわらず、鼻出血を起こさない子供もいるので、僕はほじり方が下手だったのかもしれません

悔しいです…

 

それにしても、なんで子どもって鼻をほじりたがるんでしょうね?

これは本能的な行為なのでしょうか

 

映画「アナと雪の女王」において、ハンス王子の鼻のほじり方や、鼻糞を食べるかどうかということでクリストフがアナをおちょくるシーンがありました

別に鼻ほじったっていいじゃないですか

 

クリストフによると

All men do it

ということで、男ならみんなそうするらしいです

 

鼻をほじるという動作に関しては、よく「汚い」という意見を聞きます

指に対して汚いのか、鼻に対して汚いのか、どっちの認識でしょうか?

個人的には鼻粘膜より指の方が汚いし、鼻粘膜の方が弱いのではないかと思います

そんな汚い指を鼻に突っ込んだら鼻粘膜がかわいそうだよ

という旨の注意はあってもいいかもしれません

 

なお

鼻糞を食べることについては特に咎める必要はないです

 

解剖生理の話になりますが、鼻腔の鼻粘膜は線毛が発達しており、粘液に付着した異物を咽頭側へ押しやっています

その粘液が乾燥したものがまさに鼻糞なわけです

それでは乾燥しない液体状態の鼻糞はどこに行くのでしょうか?

咽頭に流れた液体鼻糞は吐き出すか飲み込むかしかありません

 

そうです

お察しのとおり、皆さんがもし数分に一回液体鼻糞を吐き出していないのであれば、無意識に飲んでいるのです

 

人類は皆液体鼻糞を飲み込み続けています!

 

咽頭に流れた鼻糞を飲んでも、鼻の穴から出した鼻糞を飲んでも、僕は同じだと思います

同じだとは思うのですが、鼻腔粘膜を傷つけるかもしれないし、指は汚いので、鼻ほじはやめとこうねと注意しているわけです

 

鼻血の止め方

さて、何が言いたいのか分からなくなりましたが、子どもは鼻をほじるもので、鼻をほじって鼻出血を起こしても、その度に圧迫止血をしていたということを伝えたかったのです

鼻翼を押さえるというだけのことですから、幼稚園児にも可能なのです

 

あと、咽頭に流れた鼻血を飲み込み続けると気分が悪くなりかねませんので、なるべく逆流しないように下を向くことが大事です

世にまことしやかに流れる、鼻根部を抑えて天を仰ぐ姿勢はどこから生まれたものなのかわかりません

止血できないし咽頭に血液が流れるし良くないです

 

正しい止血法を試みても止血ができないという場合には、止血しにくい背景があるか、鼻腔後方の蝶口蓋動脈からの出血が疑われます

これは放っておけません

気道閉塞を招いたり出血が多量になったりする恐れがあるので、なるべく早く止血したいところです

ですので

鼻出血での救急搬送はアリです

 

ただし、すべての鼻血が救急搬送されたら社会が成り立たなくなるので、なるべくサービスが必要十分に提供されるようになればいいなとは思います