敗血症は理解に難渋する
以前のエントリーで紹介した敗血症
啓発活動をしつつ、日々の診療にも携わっておりますが、それでもやっぱり難しいなと思います
一言で言えば、感染症を契機に全身の免疫反応が起こり、行きすぎた防御反応が自らの臓器障害に繋がっていく症候群なのですが、治療は何をしますか?と尋ねられると、一言では語れないものがあります
感染症治療+臓器障害への対応
僕はよく、敗血症をウルトラマンに例えます
怪獣が街にやってきたらウルトラマンが戦ってくれます
ウルトラマンがえげつない戦い方をすると街が壊れてしまいますが、ウルトラマンがいないと怪獣は倒せません
適度にウルトラマンを応援しつつ、怪獣を倒し、怪獣が壊した街を直していくことでしか平和は訪れないというわけです
敗血症も同じで、感染性微生物が入り、免疫システムが戦ってくれます
免疫システムを応援しつつ(抗菌薬投与や感染源除去)、壊れた街(体)を立て直していく必要があるのです
平たくいうと、感染症治療をしつつ、起こっている臓器障害の立て直しをしていくのが治療になります
敗血症は早期に発見することで、臓器障害の進行が浅い段階で介入することができますが、敗血症が進行すると、血管拡張や血管内水分が血管外へ漏れた結果血圧が下がったり、呼吸状態が悪くなったり、過剰な免疫反応の結果、意識障害まで起こしてきます
かなり複雑な現象に対応していかなくてはならないので、病態をしっかり理解して、おこっている現象を確実に認識しなくてはなりません
敗血症の理解を深める
敗血症診療ガイドラインが4年に1回発表され、最新のエビデンスを集約して、その時点でもっとも適切と考えられる治療介入を示してくれています
国際的なものに加えて、日本独自のものもあります
日本版 敗血症診療ガイドライン 2016 (J-SSCG2016) ダイジェスト版
- 作者: 一般社団法人日本集中治療医学会・一般社団法人日本救急医学会日本版敗血症診療ガイドライン2016作成特別委員会
- 出版社/メーカー: 真興交易医書出版部
- 発売日: 2017/03/10
- メディア: 単行本
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ガイドラインでは治療方針の大枠について指針が得られる一方、具体的な治療方法について、マニュアル的に利用できるものではありません
日々の臨床の悩みをうまく解消するためには、実際の診療法も同時に学ぶ必要があります
というわけで、敗血症の病態と、治療方法を同時に学べる良書を紹介します
順天堂大学医学部附属浦安病院の近藤先生による
ブラッシュアップ敗血症
です
敗血症の歴史、病態、治療法の変遷、具体的な介入方法まで、よくまとまっています
敗血症の対応で悩んだことがある人、敗血症の治療でもっとできることはなかったのかと振り返ったことがある人は必読です
来年にはガイドラインの改訂が予定されております
ぜひ、現時点での最新の知識を整理しつつ、日々の診療の役に立てていただければと思います