救急での創処置は難しい
創部をどのように処置するかというのは、意外と悩ましい問題です
おそらく体系化して教わる機会が少ないというのが大きな原因となっていると思われます
道具の使い方や、基本的な運針などは外科研修で学べるかもしれませんが、救急での創処置はさらなる創意工夫が必要なのです
手術時の創のように創面がきれいではなかったり、ガタガタになっていたり、3角形のフラップやY字型の創みたいに特殊な形をしていたり、異物が混入しているかもしれません
救急受診される方は、だいたい初めましての人がほとんどです
創処置前後にも、どんな病歴を聞いて、どんな情報をカルテに記載しておくといいかなど重要なことがありますが、このあたりの教育は卒後に集約されています
施設ごとのガラパゴス化した方法を先輩に教わった通りに行なっていたり、人によっては全く教わらないままに、何となく処置をしていたりという状況です
経験に基づき、手探りで行われていると言っても過言ではない創処置ですが、エビデンスに則り、標準的な処置方法を知るための教科書としてAlexander T. Trottの『Wounds and Lacerations: Emergency Care and Closure』がERで好まれて読まれています

Wounds and Lacerations: Emergency Care and Closure (Expert Consult - Online and Print), 4e
- 作者: Alexander T. Trott MD
- 出版社/メーカー: Saunders
- 発売日: 2012/04/04
- メディア: ハードカバー
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ERでの創処置
この教科書の素晴らしいところは、情報がよくまとまっており、参考文献がきちんと示されているところです
辞書みたいなマニアックな書籍ではなく、処置を行う上で必要な情報が網羅されているので、1回目を通すだけでなく、その後外来に置いて必要な時に再度調べるといった使い方をすることで、施設として創処置のブラッシュアップが可能になると思います
今の方法で特に困っていないから別にいいです!
という人もいるかもしれませんが、意外と研修医は困っており、根拠を知りたがるものです
例えば
- 普段使用する局所麻酔薬の効果発現時間や持続時間、最大用量は?
- 他に局所麻酔薬の選択肢はないのか?
- 神経ブロックと局所浸潤麻酔の使い分けは?
- 神経ブロックはどこにどれだけ注射するのが適当?
- 血管収縮薬入りの麻酔薬の合併症は?
- 局所麻酔時の疼痛の抑え方は?
- 表面麻酔の適応は?
こうした疑問にさっと答えが出てきた人には教科書は必要ないのかもしれませんが、毎回処置の前に研修医はパニック状態です
一度はしっかり勉強しておくべき事項だと思います
英語が苦手な人に
しかし英語は読むのが大変だし……という人に朗報です
この度、友人が日本語に訳してくれました!
沖縄県立中部病院の岡正二郎先生 監訳で、今年9月に発売されました
美しい図表や写真はそのままに、効率よく勉強することができます
ERでは目や耳の創に出合うことはまれではありませんし、小児の処置をする機会も多いです
膿瘍の処置もしなければならないし、複雑な創にはあれこれのドレッシング方法の中から適切なものを選定しなくては、良好な治癒につなげられません
自信を持って明日からの診療ができるように、外来で創処置にかかわる人は必携の一冊と言えます
岡先生はEM Allianceで活動をしている友人ですが、いくら売れても僕には一銭も入りません
金銭の貸し借りもありませんのでCOIはないと判断しております
安心して購入してください